【寄稿】「戦争マラリア」から考えるコロナウイルス感染拡大と危険性

「コロナウイルスの感染拡大と『戦争マラリア』は似ているのですか?どんな共通点がありますか?」

このような質問を拙著『沖縄「戦争マラリア」』の出版以降たびたび受けるようになりました。感染拡大が広がる今、「戦争マラリア」の歴史から見るコロナ感染拡大と危険性について、法学館憲法研究所に寄稿しました。

沖縄「戦争マラリア」が私たちに問うもの 〜住民犠牲の歴史から考えるコロナウイルス感染拡大と危険性〜

「コロナウイルスの感染拡大と『戦争マラリア』は似ているのですか?どんな共通点がありますか?」  このような質問を拙著の出版以降たびたび受けるようになりました。  私の最新のルポルタージュ『沖縄「戦争マラリア」〜強制疎開死3600人の真相に迫る』(2020年2月17日・あけび書房)は、1945年の沖縄戦の最中に起きた「もうひとつの沖縄戦」と呼ばれる「戦争マラリア」を10年にわたる現地取材で追ったノンフィクションです。戦時中、日本軍の軍命によりマラリア有病地へ「強制移住」させられ、死亡した3600人以上の一般住民の悲劇の真相を、体験者への取材や、日本軍の作戦資料などを紐解きながら明らかにしました。  「戦争マラリア」から75年、コロナウイルスの感染拡大が広がる今だからこそ、過去の教訓を学ぶ時だと思います。1:地上戦なき島々の沖縄戦  そもそも「戦争マラリア」とはなにか。おそらく、拙著のタイトルを目にした多くの方々が最初に抱く疑問だと思います。2009年夏、「戦争マラリア」を初めて知った時の私もそうでした。  当時、将来のジャーナリストを目指して早稲田大学大学院で学んでいた私は、石垣島の八重山毎日新聞社でのインターンシップをきっかけに、偶然「戦争マラリア」を知りました。  それは1945年、沖縄戦最中の八重山諸島(波照間島、石垣島、黒島などの離島からなる日本最南端の地域)で起きました。当時、八重山諸島に駐留していた日本軍は「米軍上陸」を口実に、一般住民たちに対し、山間部のジャングル地帯への「移住」を命令しました。軍は移住先を細かく指定。それらは、ハマダラ蚊が媒介する恐ろしい熱病・マラリアの有病地として、昔から住民たちに恐れられてきた場所でした。医療も食糧も乏しい中、ジャングルの中に粗末な丸太小屋をたてて生活を続けた住民たちでしたが、次々とマラリア蚊の犠牲になり、3600人以上が死亡しました。  軍命による強制移住、それが引き起こしたマラリアによる病死。これが沖縄で「もうひとつの沖縄戦」と呼ばれてきた「戦争マラリア」です。 「戦争マラリア」を初めて知った当時の私は、大きな衝撃を受けました。米軍の上陸も地上戦もなかった

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大矢英代|Hanayo Oya

Journalist / Documentary Filmmaker based in the U.S. ジャーナリスト、ドキュメンタリー監督 大矢英代の公式ウェブサイトです

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